わたしは月に1回”ジブリを観る日”というのを設定しています。大人になってジブリを見始めたのは子どもと一緒にトトロを何度も観ていて「大人でもジブリって楽しめるんだな」と感じたから。
幼い頃から、ジブリは母と一緒に映画館で観たり、金曜ロードショーで観る機会がありましたが、大人になって観てみるとその”深さ”に感銘を受けたり、勉強になることがたくさんあります。
今回は、海外でも大人気のジブリ作品の一つ『千と千尋の神隠し』を大人女子的楽しみ方についてお話ししたいと思います。
(一部ネタバレを含んでいるので、まだ観たことのない方で知りたくない方はご注意下さい。)
Contents
あらすじ
『千と千尋の神隠し』とは?
ご存知のかたもたーくさんいるかもしれませんが、念の為の補足としてご紹介させて下さい。『千と千尋の神隠し』は、2001年の日本の長編アニメーション映画。監督・脚本は、もちろん宮崎駿さんです。 制作のきっかけは、宮崎駿監督のプライベートで仲の良い友人である10歳の少女を喜ばせたいというものだったそう。
過去のインタビューで宮崎監督はこの作品は”どこにでもいる女の子を主人公にして、この世界がどんなに豊かでたくさんの可能性があるかを描きたかった”と語っています。
”大丈夫、あなたならやっていける”というメッセージを小さな子どもたちに伝えたかった宮崎監督の思いは、小さな子どもではない私の心に今とても突き刺さっています。
超簡単にあらすじを復習
物語は、主人公の荻野千尋が両親とともに不思議な世界へ迷い込むところから始まります。ひょんなことから豚に変えられてしまった両親を救うべく、また元の世界に戻るために、ハクという謎の少年の助けを借りながら奮闘していきます。
大人になった私が観た”千と千尋”の見どころはここ
極端な大人の描き方に現代の世の中がよく伺える
物語の冒頭で、嫌がる千尋をよそに自分たちの好奇心と欲で突き進む千尋の両親たち。
「こんな自分勝手な親っているのかな?」とかなり極端に描かれているとは思うのですが、そんな大人を描くことで人間社会の構造を映し出したかったのかなと個人的に思います。
特に千尋の父親が、”大丈夫。お父さんがいるんだから。カードもあるし、お金だってあるんだから大丈夫。”と言うセリフを言いながら勝手にご飯を食べるシーンは、お金が何でも解決すると思っている人、お金を持っている人が偉いのだ、と思っている社会に侵食された大人をよく映し出しています。(千尋の両親はバブル世代という説もあるようなので、この辺はとても納得できるような…)
お金を集められる人が強い資本主義や、人を集められる人が強い民主主義という社会がこの千尋の父親にはとてもよく反映されているなと関心しました。
自然と脅かしている人間たち
どんな親でもやっぱり子どもにとっては大切な親。豚にされた両親を助けるべく、ハクの助けを得て湯婆婆が支配する”八百万の神様たちが疲れを癒しに来るお湯屋・油屋”で働き始めた千尋。
そこで、もの凄い悪臭を放つクサレ神を新人の千尋が湯婆婆に指名され、おもてなしをすることになります。
異臭に負けじと懸命に働く千尋のおかげで、実はこの神様の正体は河の神様だったことが判明します。おそらく、人間たちがたくさんのゴミを河に放り投げた結果このような姿になったのだと思われます。
物語の焦点は千尋の成長を描いているのでここを深堀りはされていませんが、その他にも人間たちが自然を脅かしていることを象徴することがこの作品の中には随所に感じられます。
例えば、ハクの正体。物語の最後でハクは川の神様だったことが分かります。その川はマンションを作るために埋め立てられたことも語られていて、おそらく行き場を失ってこともあり、ハクはこの世界に迷い込んだことが推測されますが、やはりここでも人間のエゴが自然に対して敬意のない行動をしていることが伺えます。
一緒にいては駄目場所、駄目な人
序盤から登場しどこか不気味で強い存在感を持ったキャラクター・カオナシに、対しての千尋のセリフが
「あの子はここにいちゃ駄目なんだよ」。
千と千尋の神隠しより
メンタリストのDaigoさんによると人間関係は私たちが幸運になるか不運になるかを左右するのに最も影響すると科学的に言われているそうです。
いてはいけない場所や、一緒にいない方が良い人っていますよね。
物語の終盤でカオナシは千尋と共に銭婆の家へ訪れて、油屋にいた時よりも穏やかに描かれています。
宮崎監督はカオナシを「現代の若者をイメージした。ああいう誰かとくっつきたいけど自分がないっていう人、どこにでもいると思う」とコメント。つまり”自分の軸がない”ということなんですよね。
この千尋が放ったセリフから、自分がいるべき場所や一緒にいた方がいい人というのは、自分の軸や使命、生きがいに繋がるんだろうと感じました。
”今”を精一杯生きることの重要性
ハクを助けたいけれど、どうすればいいのか分からない千尋に銭婆言ったセリフが、
「一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで」
千と千尋の神隠しより
毎日、毎時間、毎分、毎秒、私たちは大きなことから小さなことまでたくさんの経験を積み重ねています。一つ一つの経験が私たちを作り上げていっているということを、このセリフを聞いて感じました。
誰かのために何かとしたいという愛のパワー
私が物語全体を通して感じたことは”愛のパワー”はやっぱり無敵だということ。どこにでもいる少女が、試行錯誤しながらも、両親そしてハクを救う姿からは愛のパワーを感じられずにはいれません。
大切な誰かのためにする行為というものは、結局はその人本人にとって幸せをもたらしてくれる行為なんだと思います。
観る人によって色々な考察ができる物語
奥深いメッセージがある『千と千尋の神隠し』は海外でも大人気。
謎の多い作品でもあるのですが、その背景を考察できるのもこの作品の魅力だと思います。
公開された15年前は、まだ高校生だった私でしたが、大人になった今観てみると自分なりの新しい発見があり、「私もそれなりに成長したのかな」と感じられました。
皆さんは『千と千尋の神隠し』を大人になって観て何を考えますか?
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