川上未映子著『夏物語』第一部の感想 #ブッククラブ

小説『夏物語』に出会って1年が過ぎました。

最初にこの小説を読んだとき、思い出したことがあります。それは、わたしの結婚式で起こったこと。ある人がウェディングドレス姿のわたしを見て「あの細い体では子どもを産むのは難しい」と言った人がいたそうです。その話を聞いた別の人は、それ以降わたしに会う度に「もっと食べなさい」とわたしの体が必要としている以上の食べ物を食べさせようとするようになりました。

後々この話を聞いて、特に怒っていたわけでも悲しんだわけでもありません。きっと善意でそうしてくれているのだろうとは思いました。けれど、それ以来「わたしって何なんだろう」とよく考えることが増えました。

『夏物語』を一気に読み終え、少しお休みをして、また読み、また読み、を繰り返し、何度も自分の疑問に答えを出そうとして試行錯誤して1年。

女性って何?家族って何?生きるって何?この本を読んで、たくさんのことを考え、感じ、そしてたくさん疑問が今もあります。

3回目を読み終えて、ようやく頭の中が整理できたので、第一部そして、第二部に分けて感じていることや、疑問に思っていることをシェアしたいと思います。

感想を補助するために一部ネタバレを含む内容となります。まだ読んでいらっしゃらない方で内容が分かってしまうことを避けたいという方は、ご自身の選択でお読み下さい。

『夏物語』とは

芥川賞作家の川上未映子さんの名前を世界中に知らしめたと言っても過言ではない『夏物語』。日本では2019年に文庫が刊行され、2020年に英訳され英語圏で単行本デビューし、大きな反響を読んでいる作品です。

この作品は、芥川賞受賞作品の『乳と卵』のリブートで、二部構成になっているのが特徴。第一部は『乳と卵』に手を加えてボリュームアップしたもの。そして、第二部はそれから8年後が描かれています。

今回は、夏物語の第一部を読んで考えたことや感想をお話したいと思います。

夏物語 第一部のあらすじ

物語は、2008年の熱い夏。30歳の夏子は、豊胸の手術をすることを考え上京する姉・巻子とその娘の緑子を東京駅で迎えるところからはじまります。

39歳の巻子は地元大阪でホステスとして働くシングルマザー。12歳の緑子は、月経に対して嫌悪感と違和感を感じる年頃の女の子。巻子そして夏子にも一切口を開かず、コミュニケーションはノートとペンを使って行うという徹底ぶりの、反抗したい気持ちと気にかけてほしいという気持ちを全面に表した女の子として描かれています。

夏物語 第一部の感想: 緑子の”大人になること”への嫌悪感や違和感が印象的

12歳の緑子は物語の中で、生理に対して嫌悪感や違和感を感じています。クラスメートの女子の間では、「〇〇ちゃんは、もうきた」「わたしはまだ」という話題があがることも多い中で、緑子は「生理がなぜ女性だけにあるのか」、「そもそも女性とは何なのか」と違和感を感じています。

わたしも小学校中学年から高学年にかけての間に、女子生徒だけが図書室に集められて生理についての授業を受けたのを覚えています。

当時は、”女性として大人になっていくこと”に何の疑問を持つことも違和感も感じることもありませんでした。先生という肩書きが付く人の言うことは「そういうものだから」と正しいことなんだと思わされる環境にわたしはずっといました。また、「みんな同じだから」という安心感を与えられたことも、女性はそういうものだと暗示をかけていたのかもしれません。

もちろんわたしと緑子は生まれ育った環境が異なることも大きく影響しているのかもしれませんが。

小説の中では、緑子の疑問に対しての答えは示されていません。わたしもかれこれ8年ほど考えていますが、やはり自分の納得できる結論には至っていません。むしろ、答えは出さないでもいいのではないかなと思っています。

けれど一つわたしが信じていることが一つあります。それは、世の中は正反対のものがあるから成り立っている。けれど男性や女性という性別とは関係なしの使命というのが、個々に与えられているということ。

女性には生理があるのだから、結婚すれば妊娠して、子どもを産むということは当たり前のことと考える人は今もたくさんいます。女性に生まれてきたからできることであるし、わたし自身も自ら子どもがほしいと望んで子どもを出産したわけなのですが、それでもそれを当たり前のことだからと他人に押し付けられるのは、やはり違和感を感じることではあります。

みんな不完全でも頑張って生きてる

夏物語に出てくる登場人物はみんな、何となく生きているのではなくしっかりと一瞬一瞬をときに笑い、ときに苦悩しながら一生懸命生きて、その都度自分で選択をしているのが印象的です。

それぞれ「なんでそんなことするの」と突っ込みどころも結構多いのですが、要領よく何となく生きているのではなく、不器用で不完全ながら一生懸命の選択をしていることについ応援したくなる。

自分の不完全さに気づき、認める、そして生きていく。そうすれば、もっと周りがどれだけ(自分にとって)不完全であっても、それを許すことができるようになるのかもしれません。

次回は夏物語 第二部を読んで感じたことをおはなししてきたいと思います。

聴く読書もおすすめ!

夏物語は、500ページの長編小説です。また主人公の大阪弁に、関東出身のわたしは結構読むのに苦戦しました。

長編小説に慣れていない方や、大阪弁に慣れていない方などは、聴くアプリを利用しての読書もおすすめです。

ABOUTこの記事をかいた人

シンガポール在住8年のライター/Webクリエイター/ヨガインストラクター(全米ヨガアライアンスRYT200保持)。4歳の娘 Emmaと夫と3人暮らし。Webを中心に、ファッション、ビューティー、ライフスタイル、旅行など幅広いジャンルに関する情報を発信。現在はWEBクリエイターとしてWEBサイトを運営、取材、執筆活動を行う傍ら、RYT200を活かしシンガポールを中心にヨガインストラクターとしても活動中。